u/Ninotchka26meow

【私は美人】大正元年8月6日都新聞【のーもら歴史探訪】

今回のご相談者さんは山梨の〈森女〉さんから(昔のペンネームは癖が強い)。

>私は十九歳の女です。ずっと以前から女優になる目的でして、先月帝国劇場技芸術学校の規則書を取って見ましたら技芸の素養がなくてはいけないとありました。私の家は商家ですから技芸の素養はありません。しかし人様には女優顔だからぜひ女優になるがよいと言われます。ほかにどうしたらよいところの女優になれましょう。

すんごい自信……。こんな無茶振りでも、記者様はちゃんと答えてくださる。

>女優顔だなんて別に女優に生まれた顔なんていうものはありませぬ。うっかり軽薄な人のおだてに乗って身を誤るような軽率なことをなさらないようみとご注意申す。お手紙のような訳で女優になろうと申すのは、心はすでに身を誤る階段と記者には残念に存ぜられます。

でも、こういう勘違いをしてくれる人もいないと世の中面白くないと思うのよね。

出典:『お悩み相談~ああ、わたしって可哀相~』文藝春秋

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u/Ninotchka26meow — 4 hours ago

【大正時代のネカマ】大正3年4月4日都新聞【のーもら歴史探訪】

ペンネーム【高田露女】さんのお悩み

>昨年ある雑誌へ和歌を投じましたところ、それが賞に入りますと、未知の方から絵葉書に歌を褒めて送ってくれました。私はうれしさの余り丁寧に返事をしたためて送りますと向こうからは折り返し手紙を送りその後数回往復したのですが、先方から求めらるるままに写真をさえ送りました。その方は今手元にないからそのうちにということでした。ところが、一昨日受け取った手紙にて自分は実は男で今年十八歳になるものだということや今まで通り交際してほしいということなどが記してありました。私は非常に驚き、ただちに父母に打ち明けようかと思いましたが、もし変に思われたりすると困りますのでどうしたらいいかと独りで心配しております。

記者様のお答えはこちら。

>かような不都合をする不良少年はどこにもいるものです。そのために間違いができたことは久しい以前から聞き及んでおります。あなたもまたその手にかかったのです。この際母上にお詫びしとくとお話し申し上げ、そして相手になさらぬがよい。これにこりて処女たる御身、知らぬ人と手紙の往復することなど断じておよしなさい。入賞するほどの歌でも詠もうという教育ある身がそれぐらい物の道理を知っておられるべきはずですのに何たる不都合なことです。いわんや写真を送るなどは言語道断です。今後深く深くお慎みなさい。

言ってることは分からんでもないけどさ、「そもそもアンタが軽率なことをしたのが悪い」って説教してくるのがムカつくんですけど。

出典:『お悩み相談~ああ、わたしって可哀相~』文藝春秋

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u/Ninotchka26meow — 2 days ago

【明治の少年】明治38年9月号女學世界【のーもら歴史探訪】

相談者「北海の鯨太」くんより

>衛生顧問には男子の質問をお許しくださりますまいか。

お答え

>元来女學世界は女子のみの読み物と限りませぬから、一向に差し支えありませぬ。されど生殖器に関するものだけは抜きにいたしましょう。

年頃のお嬢さんたちにとっちゃ、それも関心事だったりするんだけどなー。っていうか、アンタはどうして『女學世界』に聞こうと思ったよ?

出典:『お悩み相談~ああ、わたしって可哀相~』文藝春秋

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u/Ninotchka26meow — 3 days ago

【大正時代の処女厨】大正5年11月14日読売新聞『身の上相談』【のーもら歴史探訪】

> 私の夫は、以前、子供が二人もいたのに、貞操のことで九年間暮らしていた妻を離別しました。その後妻に来たのが私です。
 私は当時、夫の心を知らなかったものですから、自分にも過去のことを隠して継子をみるのが罪ほろぼしと思ってきたのです。そして今では、合わせて四人の子持ちです。
 ところがこの頃になって、夫は私の過去を知って大いに怒りました。
「俺は処女を知らなかった。男と生まれた生きがいもない。処女を妾として置くから、公然と承知せよ」と迫り、現に薄給の身もかまわずに、そっちの方面に金をかけて家政を顧みません。
 子供も相当の年になっているのに、家庭内のこんなありさまを知らせるのはいかにもつらいと思います。
 どうかして、怒る夫に妾を置かせずにすませる工夫はありますまいか。(悩める女)

 この時代の、「妻が処女じゃなかった…」って悩むダンナの数は結構多かったらしい(呆)。でも、この回答はもっとムカつく。

>処女と信じて結婚した婦人が二人とも処女ではなかったと知って憤ったというあなたの夫には同情せずにはいられません。夫婦の関係上、これくらい苦い思いはないでしょう。夫はあざむかれたとも、辱められたとも思うことでしょう。前にはそういう事情で離婚したとのことですが、今度は憤っただけで何らかの方法でその不平を紛らわそうとしているのは、いっそうに同情に値します。
 あなたは自分の罪の埋め合わせとして継子のめんどうを見てきたとのことですが、あなたとしてはそれよりほかに方法がなかったのでしょう。しかし、夫の感情を思いますと、あなたのその親切だけではまだ相殺できなかったろうと思います。
 あなたはこの上もっと身を責め、夫や子供を愛することによって夫の許しを請わなければなりません。
 それが、この問題の解決のしかたです。
 夫が妾を持つのをやめさせる工夫はありません。夫は薄給だからなどと、あなたは目前の都合ばかりを主に考えているようですが、夫の感情はもっと深刻なもので、あなたにはそれが汲み取れていないようです。あなたはもっと夫の心をお汲みなさい。それが問題です。
 夫はたぶん、妾は持たないでしょう。

出典:『大正時代の身の上相談』ちくま文庫

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u/Ninotchka26meow — 4 days ago

【大正時代の人生相談】大正十年十二月十八日読売新聞【僕童貞】

>Q:私は二十一歳の青年で、今から声楽家となるべく勉強したいのです。私は酒もたばこも口にせず、それに童貞です。そのためか、子供子供した声が出ます。どうでしょうか。声楽家としてものになるでしょうか。ものになると仮定して、親切な音楽家のお世話を受けたいのですが、どなたか適当な方はございませんか。女中代わりでも、ある程度は務めます。専制の暴君でも、親切に指導していただければ辛抱する覚悟です。給料はもとよりいりません。朝刊を配達する時間さえくださったらけっこうです。高等小学校卒業後、私立中学で二年学んだだけで、もちろん素養の足りないことも知っていますが、できるかぎり勉強いたします。どうか私に、よい先生をご推薦ください。      (田舎の一青年)

>記者様のありがたきお答え:あなたに声楽家の素養があるかどうかは判断できませんので、ご希望に賛意を表するとも、否むともできませんが、単に美声を唯一の頼みに声楽家になろうとするのはいささか軽挙ではありませんか。いちおうご熟慮なさい。しかしご推薦し得る先生が見つかったら、紹介の労をとることはけっして厭いません。

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u/Ninotchka26meow — 5 days ago

【のーもら文藝部】過去作【時代考証とかは雑】

珍しく和物を書いてましたわ。

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 母上がわたくしを産み落とした時、産婆の手に抱かれた赤子はぐにゃりと力なくもたれるだけで、泣き声を上げることもできない状態だったらしい。そんなことだから、その場にいた女たちは皆、この子はすぐに息絶えてしまうだろうと考えたのも致し方のないことであった。

 しかし、初めてのお産を終えたばかりの母上に、そのことを伝えるのは気が引けた。互いに顔を見合わせ、母上の「子を、わたしの子を……」と赤子を請う声にどう応じていいのか困惑していると、一人の年若い女房が産婆から青い顔をしている赤子を取り上げ、いきなり口吸いをし始めた。

 一同が呆気に取られながらその様子を眺めていたら、やがて赤子の口から、ほほっ、とか弱い息が漏れた。思いがけないことに息を飲んだのもつかの間、次の瞬間にその赤子はぎゃんぎゃんと泣き喚き始めた。その泣き声たるや、さっきまでの沈黙が嘘のようにやかましく、まるで虎の子のように一所懸命に喚く様の愛らしさに、場は一気に和やかな空気に包まれた。

 これが、わたくしがこの世に出でた瞬間の出来事である。

 そして、その後もわたくしは虚弱のまま十四となった。

 男も十四であれば立派な成年として世に立つことになるはずであるが、わたくしはその任を負う義務からとうの昔に外されていた。長子でありながら、虚弱であることに加えて女子のように怖がりで臆病な息子を、父上は嫌い疎ましがり、わたくしが五つの時、橘家を継がせるのは弟の兼定と決めてしまった。それ以降わたくしは、邸宅の裏にある庵で書や音楽に耽る孤独な生活を送ることになった。それまで、乳母やら女房やらで賑わっていたわたくしの周りは、一人、また一人といなくなり、ただ一人を置いて人の気配はすっかり消えてしまった。

 彼女の名は梳子と言った。彼女がいなければわたくしの命はなかっただろう。あの時、口吸いをしてくれたのが梳子だった。梳子は、十二で橘の家に出仕してきた下級貴族の娘で、あの時はまだこの家に来て数ヶ月という頃だった。あの一件以来、橘ではわたくしの命を救ってくれた恩人として重用されるようになったが、わたくしが跡継ぎから外されると同時に、彼女の立場もまた凋落することになった。

 そんな経緯もあり、実家から他の勤め口を見つけるから橘から暇を貰って帰ってこいと言われたのにもかかわらず、それ以降も梳子はわたくしに昼も夜もなく、まめまめしく仕えてくれていた。

「だって、わたしはずっと雅延さまにお仕えすると決めているのですから」

 梳子はそう言って、今日もわたくしが読んだ書を書棚に仕舞う。

 お仕えするという言葉に嘘はなかった。彼女は常にわたくしのそばにいてくれた。起きてから床につくまで、ずっと、ずうっと、わたくしが寂しくないように共に過ごしてくれる。いや、時には床についてからもそばにいることがあった。

 わたくしは夜が怖かった。

 灯りが消え、真っ暗になると、体の奥の方から得体の知れない怖ろしい感覚が湧き上がってくることが、ままあった。その感覚は、言葉にすることすら怖ろしく、ただ蒲団の中でガタガタと震えて朝が来るのを待つだけだった。わたくしが一人そんな風に怯えていることを、隣の部屋にいる梳子はどういうわけか気づいてくれ、

「雅延さま、今夜も”あれ”が来たのですか?」

 と戸を開けて来てくれる。

 そして、わたくしの蒲団の中にすっと静かに入ってきて、わたくしが安心して眠りにつくまで体をさすってくれるのだ。

「怖くない、怖くない。”それ”は必ず鎮まりますよ」

 彼女の手の感触に包まれ、真綿のような柔らかで優しい声を聴いていると、ものの数分ですうっと寝入ってしまう。そして、朝が来るまで夢魔の出る幕もないほど安眠できるのだった。

 梳子はわたくしとずっと一緒にいてくれると、信じて疑わなかった。だって、わたくしは梳子が好きだった。彼女がいることで、わたくしの存在が意味あるものになると考えていたのだ。 

 だが、それは突然だった。

 梳子に縁談が持ち上がったのだ。相手は少将の息子で、どこかから梳子の働きぶりを聞き知ったらしく、それほど献身的に働く娘なら嫁に迎えたい、となったらしい。話を持ち込まれた当初の梳子は、渋っていた。わたくしを置いて嫁に行くなど、裏切りでしかないと実母に訴えた。

 しかし、梳子の母君は「だからこそ、嫁に行くべきだ」と説いた。

 お前が雅延さまに献身的であればあるほど、雅延さまはお前なしでは生きていけなくなる。それは、双方にとって不幸でしかない。ここで袂を別って、お前はお前の、雅延さまはまさの人生を歩む時である、と。

 わたくしは梳子の母君の言葉を隣の部屋で聞いていて、胸に棘が刺さるような思いをすると同時に、母君の話ももっともだと思った。いつまでも梳子をわたくしのもとに留め置いていては、彼女の一生を台無しにしてしまう。それは、わたくしの本望ではない。わたくしは梳子に幸せになって欲しかった。好きであるからこそ、梳子には幸せになって欲しかった。

 それから、母君が帰った後、いそいそと夕餉の支度をしている梳子を呼び、わたくしはこう言った。

「梳子、わたくしのことはもういいから。自由にしなさい」

 この言葉を聞いた梳子は、信じられないといったように目を丸くし、わたくしを凝視した。

「それは……どういう意味でございますか……?」

「意味も何も、そのままだよ。わたくしももう十八だ。自分のことは一人で出来る年だ。もうお前がいなくても大丈夫なんだから、安心して……」

「嫌です!」

 梳子はそう言うと、わたくしの胸に飛び込んで泣きじゃくった。

「嫌です! わたしは雅延さまのそばから離れません! あの時、わたしの唇で雅延さまをお助けしたあの瞬間から、わたしは雅延さまと共に生きていくと決めたのです! わたしと雅延さまを引き裂く人間は、たとえ親兄弟といえど敵でございます!」

 わあわあと泣く梳子は、わたくしより十二も上なのに幼く見えた。

 そんな梳子の頭をあやすように撫でながら、わたくしは彼女にこう言った。

「梳子がいなければ、わたくしはこの世にいなかった。お前はわたくしの恩人で、父上にも母上にも見限られたわたくしを、誰よりも慈しみ、育ててくれた。有り難いと思っている。しかし、もうわたくしに囚われてはいけない。梳子には梳子の天命がある。それを生きていかねばならないんだ。大丈夫。わたくしたちの絆は、未来永劫消えてなくなることはないよ。だからもう泣くのはおし。さあ、笑って別れよう」

 そこまで言うとわたくしは、両の手で梳子の顔をそっと包んでこちらに向けた。わたくしをまっすぐ見る梳子の瞳には、哀しみの中に諦念のような、覚悟のようなものが潜んでいるのを見つけ、わたくしの胸は痛んだ。

 その純真な思いがどれだけわたくしを癒やしてきたか。彼女のひたむきな心にどれだけ救われてきたか。そして、梳子が与えてくれる悦楽が、それほどわたくしを孤独から救ってくれたか。出来ることなら梳子を攫って、この狭苦しい庵を飛びだして行きたいと、夢見たことも一度や二度ではない。

 しかし、その夢も終わりにしよう。

 しばらく沈黙が流れた後、おもむろに梳子が口を開けた。

「分かりました。雅延さまがわたしのためを思ってそう仰ってくださるのなら、その思いに報いなければ失礼というものです。梳子は、嫁に参ります」

 そう力強く言った梳子に安堵したのもつかの間、彼女はあることを口にした。

「雅延さま。お別れの前に、ひとつお願いがごさいます。梳子の最後のわがままを聞いていただきたいのです」

 これまで共にいて、愚痴一つこぼさずに来た梳子の願いならば、是非とも叶えてあげたいと思ったわたくしは気安く応じた。 

「わたしの腹に、雅延さまの子種を宿していただきたいのです」

 この十八年間、常に愛する女がそばにいたというのに、この瞬間を夢にも思わなかったというのは自分でも驚いてしまう。しかし、現実に梳子が衣を脱ぎ、肌を露わにしたのを目にした瞬間、わたくしの中で眠っていた欲望は、ようやく思いを遂げることができる喜びで暴れ出すことになった。

 一糸まとわぬ姿の梳子を胸に抱き、両の手は彼女の体を這い回った。そのしっとりとしたきめ細やかな肌、柔らかな肉の感触に、わたくしは理性を捨ててむしゃぶりついた。梳子の項に、背中に、腋に、腰に、頭を埋めるたびに、彼女の体臭が鼻腔を通じて、わたくしの体を貫き、性感を刺激した。もはやわたくしは人間としてではなく、獣のような情動で梳子を欲していた。彼女の乳房に食らいつき、荒々しく蹂躙していく。乳首に歯を立てるたびに、梳子の口から艶めかしい吐息が漏れる。

「あっ、はぁっ……んん……ま、さの、ぶ……さまぁ……」

 しかし、わたくしはこれだけでは満足できなかった。彼女から理性の鎧を剥ぎ取り、野生的な梳子が見たかった。わたくしはおもむろに、梳子の足の間へ手を伸ばした。わたくしの野生が、嗅覚が、ここから沸き立つ匂いに反応していた。閉じようとする足を無理矢理広げ、女人の秘密の園を覗き込む。そこはひたひたと蜜に溢れ、芳しい薫りに満ちており、わたくしを誘って口を広げていた。

 蜜の誘惑に抗えず、一目散にしゃぶりつく。ぴちゃぴちゃと、猫が乳を飲むように舐め取る一方で、ピンピンと魔羅の如く立ち上がっている不思議な茎を指で弾いていると、梳子の腰も飛び跳ねた。加えて、もう片方の手で秘孔に指を入れ、中へと繋がっているうねうね脈動する道を行き来させ、梳子の理性を泥になるまで蕩かせた。

「あっ、あっん、はっぁ……やんっ……まさのぶさま、だめ……そんなに、しては……すけこ……、すけ、こ、の……頭が、おかしく……なって、しまう……」 わずかに残る自我で、官能へ上りつめることに抵抗する梳子に、わたくしは最後の手段へ打って出た。

「梳子……わたくしはもう、我慢しない。お前はわたくしと一緒に色欲へ堕ちるんだ」

 この言葉に、梳子は苦しそうに息を切らしながら、嬉しそうに頬を緩めた。「ああ……そうですわね。梳子は雅延さまと、色地獄へと堕ちて行くのが夢でした。雅延さまに貫かれて、天にも上る気持ちで堕ちて行くのですね」

 うっとりと幸せそうな顔で語る梳子を見て、わたくしも嬉しかった。わたくしの男根はすっかり、刀身のように鞘を求めてそそけ立っていた。梳子の体に覆い被さる。

「いいか……梳子」

 梳子の目をまっすぐに見る。すると梳子もまた、わたくしの目を射貫くように見詰め返してこう言った。

「ええ。一緒に堕ちて行きましょう」

 梳子の中へ男根を突き立てると、わたくしたちは一心同体となった。わたくしたちは朝日が上るまでの間、何度も何度も、我が身を壊すと思われるほど互いをぶつけ合ったのだった。

 

 そして、明日のうちに梳子はわたくしのもとから離れ、予定通りに少将の息子と無事夫婦になった。

 その後、わたくしと梳子は二度と会うことはなかった。文を交わすこともなかった。

 ただ、風の便りで一つだけ知っていることがある。

 それは、梳子に似た女の子どもが出来たということだった。

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u/Ninotchka26meow — 6 days ago

【のーもら文藝部】貴婦人のための正しいペットの飼育法【過去作】

人を選ぶショートショートだと思うけど、上げてみるでやんす。

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 ルブラン伯爵夫人ヴァイオレットがアンリを飼い始めたのは、夫のルブラン伯を亡くして1年ほど経った頃のことだった。 夫を亡くして以来、それまでの社交的な性格は一変し、塞ぎ込んで屋敷に籠もってばかりの妹を案じた兄のジョージが、

「こいつでも相手にしてれば、気も紛れて伯爵がいた頃みたいな気分になれるさ」

 と贈られたのがアンリだった。

 アンリを飼い始めた当初のヴァイオレットは、

「ペット程度で、あの人を亡くした悲しみが癒えるわけがないわ」

 と思っていたものだが、兄の思いやりまで否定するのも良くないだろうと、渋々ながらアンリと暮らし始めたのだった。

 アンリは手のかかるペットだった。

 食べ物の好みは激しく、散歩は気が向いた時でなければ歩かないくせに、歩き始めるやいなや自分の気が済むまで歩くのをやめようとしない。屋敷中のクッションやソファをボロボロにし、目についた物は片っ端からおもちゃにしてしまう。壊すやら散らかすやら、やりたい放題であった。

 こんな調子なので、使用人たちのアンリの評判はすこぶる悪かった。ヴァイオレットが不在の時にアンリを打擲して躾けようとする者や、ヴァイオレットの目を盗んで食べ物に毒を盛れば、穏便にいなくすることができると考える者もいた。

 しかし、彼らの企みはことごとく失敗に終わった。アンリはヴァイオレットの何よりのお気に入りだったから、アンリに手を出そうとする気配を察するや事前に警告してきて、彼らの計画は行動を起こす前に潰された。それに、実際にそんなことをしようものなら屋敷から追い出されかねない。そんな厄介ごとを自ら進んでやろうとする愚か者はさすがにいなかった。

 アンリが来てからといもの、ヴァイオレットの変化は誰の目にも理解できた。夫の生前の時のような、いやもしかしたら伯爵が生きていた頃以上に朗らかで溌剌とした彼女に変化したのだ。

 落ち込んでいた食もアンリの旺盛な食欲につられて食べるようになったし、億劫がっていた外出もアンリと出歩くためという名目ではあるものの、以前のように外へ出る回数も増えた。ヴァイオレットの横には常にアンリがいて、彼がそばにいればヴァイオレットは心の底から安心できた。

 このように、アンリの存在がヴァイオレットに良い影響を与えたのは確かなのだが、当人の幸福感と満足感とは裏腹に、周囲の目は大変冷ややかだった。

 それも致し方ないことで、アンリは人間の男だったからだ。

 アンリはジョージの所属する陸軍の下士官だった。軍に入隊した頃の彼は大層有望な男だったのだが、突然アンリの心に異変が起きた。急にわがまま放題の子どもの姿に戻ってしまったのである。

 このまま軍に置いておくわけにはいかない。しかし、アンリを診た医者に言わせると、この状態のままで世間に放り出しても困ることになるだろうとのこと。

 さて、こいつをどう処せばいいものかと上層部一同思案していた時、ジョージの頭に浮かんだのがヴァイオレットだった。ルブラン伯夫妻には子どもがなかった。そして、今のヴァイオレットの頭の中は、孤独感と虚無感なのだろうとジョージは思っていた。だから、ヴァイオレットに子ども返りしたアンリを世話させれば、彼女も生きる気力を取り戻すだろうと考えたのだ。

 ジョージのアイデアは見事に当たった。ルブラン伯爵夫人ヴァイオレットは、再び輝きを取り戻したのである。

 二人は文字通り一日を共に過ごした。共に寝起きし、共に食べ、感情を共有し、人生を謳歌した。

 それだけならば別に困ったことではないのだが、徐々に二人の生活は歪んだ背徳的な色合いが濃くなっていった。短時間でもヴァイオレットと離れることを嫌がるアンリを、ヴァイオレットが自分のトイレにも連れて行くようになったことから始まり、アンリの食事を口移しで与えるようになった。それだけでも充分顰蹙を買うものであったのに、極めつけは「発情期」で勃起しっぱなしのアンリの陰茎を、人目も憚らず手と口で慰めるようになってしまったのである。

 極めつけは、某侯爵夫人のサロンで行われた音楽会でのことだった。

 一同が美しい音色に心奪われて酔っている中、いきなり、

「ねえママ(アンリはヴァイオレットのことをママと呼ぶ。実際の二人の年齢差は10歳もないのだが)、僕のおち×ぽまた勃ってきちゃったよぅ」

 と子どもっぽく話すアンリの声が響いた。

 当然周囲は眉を顰めるが、アンリの困った様子にヴァイオレットは、

「あらあら、仕方ないわねえ。”盛り”がついてるんだから、自分ではどうしようもないもの、ママが何とかしてあげるわ」

 と優しい声で言うなり、アンリのズボンから陰茎を取り出し、手で扱き始めた。

「あっ、あっ、ママ……あんっ、ふんっ、はぅ、うん、うん……」

 華麗な音楽とアンリの淫らな喘ぎ声の奇妙なハーモニーに場は凍り付いたが、二人はまったく意にも介さずそのまま続ける。やがて、部屋に生臭い精の匂いが漂った。アンリの陰茎の先から白濁した汁が、ぴゅっ、ぴゅと吹き出していた。

「ああ、僕もうダメぇ」

「まあ、あなたのだらしないイキ顔とっても可愛いわ、アンリ。可愛すぎて、これまで可愛い」

 そう言うとヴァイオレットは体を屈めて、口いっぱいにアンリの陰茎を頬張り、上に下にと頭を動かす。そうしていくうちに、ますますアンリの喘ぎ声に弾みがつき、周囲はもはや音楽を聴く気分ではなくなっていた。一人、そして一人と部屋からいなくなっていくが、二人には他人のことなどどうでも良かった。

「あん、ママ……ママ……もう、我慢できない……ママのお口気持ちよくていっぱい出るよぉ……」

 それから十数秒後、

「ああー……!」

 という嬌声とともに、ヴァイオレットの口いっぱいに精液が噴出した。

 全身を細かく痙攣させながら快感の余韻に浸っているアンリの顔を見つめつつ、ヴァイオレットは口の中の精液を飲み下す。

 そして、心の底から思った。

 この愛らしい「ペット」がいれば、他に望むものはない。

 これこそが、自分の求めていたものだったんだと。

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u/Ninotchka26meow — 8 days ago